皇太子殿下御成婚記念貨幣|5万円金貨・5,000円銀貨・500円白銅貨
平成5年(1993年)、皇太子殿下(今の天皇陛下)のご結婚を記念して発行された3種。表はいずれも瑞鳥の鶴2羽(金貨と500円は波、銀貨は瑞雲)、裏は菊の御紋章と皇太子殿下のお印の梓。
対象貨幣: 皇太子成婚記念硬貨
概要
平成5年(1993年)6月9日、皇太子殿下(今の天皇陛下)の結婚の儀が行われました。これを記念して、5万円金貨・5,000円銀貨・500円白銅貨の3種が発行されています。皇太子の御成婚を記念した貨幣は、これが初めてです。
表の図柄はいずれも瑞鳥の鶴2羽です。法案の審議中、大蔵省理財局長は鶴を採用する考えを国会で示し、その年の歌会始で皇太子殿下が詠まれた御歌のお気持ちを図柄に反映できるのではないかと述べています。裏は菊の御紋章と、皇太子殿下のお印の梓です。銀貨と白銅貨は結婚の儀の5日前に引換えが始まり、5万円金貨の引換えは3か月後の9月9日からでした。政府は国会で、金貨は特別の法律の成立を待って製造にかかり、製造に4か月近くかかる見込みだと説明していました。
基本スペック
- 額面
- 50,000円(金貨)・5,000円(銀貨)・500円(白銅貨)
- 年銘
- 平成5年
- 素材及び品位
- 金〔純金〕・銀〔純銀〕・白銅(銅750・ニッケル250)
- 量目
- 18.0g・15.0g・7.2g
- 直径
- 27.0mm・30.0mm・26.5mm
- 発行枚数
- 200万枚・500万枚・3,000万枚
皇太子殿下御成婚記念貨幣の3種
| 5万円金貨 | 5,000円銀貨 | 500円白銅貨 | |
|---|---|---|---|
| 図柄(表) | 瑞鳥の鶴2羽と波 | 瑞鳥の鶴2羽と瑞雲 | 瑞鳥の鶴2羽と波 |
| 図柄(裏) | 菊の御紋章と皇太子殿下のお印の梓 | 菊の御紋章と皇太子殿下のお印の梓 | 菊の御紋章と皇太子殿下のお印の梓 |
| 素材及び品位 | 金〔純金〕 | 銀〔純銀〕 | 白銅(銅750・ニッケル250) |
| 直径 | 27.0mm | 30.0mm | 26.5mm |
| 量目 | 18.0g | 15.0g | 7.2g |
| 発行枚数 | 200万枚 | 500万枚 | 3,000万枚 |
| 引換開始日 | 平成5年9月9日 | 平成5年6月4日 | 平成5年6月4日 |
| 発行の根拠 | 平成5年法律第33号・政令第163号 | 政令 | 政令 |
値は財務省「記念貨幣一覧」、発行の根拠は e-Gov 法令検索と国会会議録による。
出典: [S1] 財務省/[S9] e-Gov 法令検索/[S10] e-Gov 法令検索/[S5] 国立国会図書館 国会会議録検索システム
ご結婚と、初めての御成婚記念貨幣
宮内庁の略歴によると、平成5年1月19日に皇室会議、4月12日に納采の儀があり、6月9日に結婚の儀が行われました。結婚の儀は、お二方が賢所で結婚の誓いをされる儀式です。
大蔵省は平成5年1月の国会で、御成婚は「国家的な記念事業」にあたると答え、貨幣の種類・額面・図柄は有識者の会合で決めると説明しました。その会合は2月22日に開かれています。
皇太子の御成婚を記念した貨幣は、これが初めてです。上皇陛下が皇太子の時代にご結婚された昭和34年には、記念貨幣は出されていません。大蔵省理財局長はその理由を、当時は記念貨幣を発行する観念や慣行がなかったためだと答えています。財務省も、記念貨幣は昭和39年の東京オリンピック記念千円銀貨幣以降のもので、それ以前のものは無いとしています。
出典: [S2] 宮内庁/[S3] 宮内庁/[S4] 国立国会図書館 国会会議録検索システム/[S5] 国立国会図書館 国会会議録検索システム/[S6] 国立国会図書館 国会会議録検索システム/[S12] 財務省(よくあるご質問)
図柄 — 歌会始の御歌と鶴、お印の梓
財務省の記念貨幣一覧によると、表の図柄は3種とも瑞鳥の鶴2羽で、金貨と500円白銅貨は「鶴2羽と波」、銀貨は「鶴2羽と瑞雲」です。裏は3種とも、菊の御紋章と皇太子殿下のお印の梓です。
図柄の決め方は国会で説明されています。理財局長によると、有識者の懇談会では肖像を使うかどうかで意見がほぼ半々に分かれ、総意としては「華やかで親しみやすい図柄」で一致しました。理財局長は、こうした意見を踏まえて瑞鳥である鶴をデザインとして採用することを「現在考えておる」と述べ、懇談会の意見にぴったりであることに加えて、平成5年の歌会始の皇太子殿下の御歌「大空に舞ひ立つ鶴の」のお喜びのお気持ちをデザインに反映できるのではないかと答弁しています。
これは法案審議の段階(平成5年4月21日)で予定として述べられた考えです。図柄が最終的に決まった経過や、公式の選定理由を記した資料は確認できていません。
宮内庁の資料によると、その年のお題は「空」で、皇太子殿下の御歌は「大空に舞ひ立つ鶴の群眺む幼な日よりのわが夢かなふ」です。
梓は、宮内庁の略歴に天皇陛下(当時の皇太子殿下)のお印として記されています。
5万円金貨のための法律と、額面の決め方
当時の法律では、額面が1万円を超える記念貨幣を発行できませんでした。大蔵大臣は国会で、5万円金貨を発行できるようにするため法律案を出したと説明しています。こうして「皇太子徳仁親王の婚姻を記念するための五万円の貨幣の発行に関する法律」(平成5年法律第33号)が4月30日に公布され、素材や枚数は同じ日の政令(平成5年政令第163号)で定められました。5,000円銀貨と500円白銅貨は法律の範囲内なので、政令だけで発行が決まっています。
額面は、それまでの10万円金貨から5万円に下げられました。理財局長によると、有識者の会合で「広く国民各層の需要に応じるため小さい方がいい」という意見がほぼ一致したためです。銀貨も、御在位60年の1万円銀貨の半分の5,000円にしています。
金貨の200万枚は、前回の御即位記念金貨と同じ枚数です。理財局長は、御在位60年記念金貨の約3分の1が日本銀行に戻ってきたことを踏まえたと説明しています。金の量目18グラムは額面に比べて多めに取り、額面と素材の価値の差を縮めて、偽造の動機を小さくする考えもあったと答えています。
500円白銅貨は、実際に流通することもありうると考えて、ふだんの500円玉と同じ大きさにしました。一覧で、直径26.5mm・量目7.2gの500円記念貨幣は、この御成婚記念が最初です。
出典: [S4] 国立国会図書館 国会会議録検索システム/[S5] 国立国会図書館 国会会議録検索システム/[S9] e-Gov 法令検索/[S10] e-Gov 法令検索/[S1] 財務省
金貨だけ9月 — 引換開始日がずれた理由
一覧の引換開始日は、銀貨と白銅貨が平成5年6月4日、金貨が9月9日です。銀貨と白銅貨は結婚の儀の5日前、金貨はちょうど3か月後にあたります。
理財局長は金貨が遅れた理由として、発行に法律が必要なことと、製造に時間がかかることの2つを挙げました。金貨は法律の成立を待って製造に入り、製造に4か月近くかかるため、9月から秋口の引換えになる見通しだと説明しています。銀貨と白銅貨は、御成婚の6月上旬に間に合わせることにしました。
偽造への備えとして、金貨には表面の光沢、一定枚数ごとに図柄の細部を変えること、機械で判別できる特殊な加工、金貨を入れるパックの一部に印刷局などの高度な技術を用いることの4点を施すと説明されています。
出典: [S1] 財務省/[S4] 国立国会図書館 国会会議録検索システム/[S5] 国立国会図書館 国会会議録検索システム
収集・研究の視点
この3種を確かめるときは、財務省の記念貨幣一覧で図柄・素材・直径・量目・発行枚数・引換開始日を見ます。5万円金貨については、e-Gov 法令検索で平成5年法律第33号と政令第163号を読むと、素材・量目・枚数が政令で決められていることが分かります。発行の経緯は、国立国会図書館の国会会議録検索システムで、平成5年4月21日の衆議院大蔵委員会と4月27日の参議院大蔵委員会の議事録を読むと追えます。
一覧の中で見ると、額面5万円はこの金貨だけで、金貨としては御在位60年・御即位の10万円金貨に続く3番目です。5,000円の記念貨幣で素材が純銀なのも、この銀貨だけです。
記念貨幣は今も額面で使えますが、自動販売機などでは使えないことがあり、財務省は金融機関の窓口での引換えを案内しています。
出典: [S1] 財務省/[S9] e-Gov 法令検索/[S10] e-Gov 法令検索/[S4] 国立国会図書館 国会会議録検索システム/[S5] 国立国会図書館 国会会議録検索システム/[S12] 財務省(よくあるご質問)
資料で確認できていないこと
- 図柄が鶴に最終決定された経過と公式の選定理由(国会では審議中の平成5年4月21日に「現在考えておる」予定として述べられたのみ)
- 「瑞雲」「波」を何の意味で選んだかについての、政府・造幣局の説明(造幣局の説明頁は取得できなかった)
- お印の梓がいつから使われているか
- 引換えの具体的な方法(窓口か、申込み・抽選か)と、実際の申込数
- 結婚の儀以外の関連儀式(朝見の儀・宮中饗宴の儀など)が行われた日
- プルーフ貨幣の販売価格が、平成5年当時から今の条文と同じだったか
まとめ
編集部のまとめ
皇太子殿下御成婚記念貨幣は、皇太子の結婚を記念した初めての貨幣です。表の鶴について、大蔵省理財局長は法案審議の際に、その年の歌会始の皇太子殿下の御歌のお気持ちを反映できるのではないかと国会で述べています。裏にはお印の梓が描かれています。5万円金貨は特別の法律で発行され、額面を10万円から5万円に下げ、引換えは結婚の儀の3か月後に始まりました。政府は国会で、法律の成立を待って製造にかかることと、金貨の製造に時間がかかることを挙げていました。500円白銅貨は、ふだんの500円玉と同じ大きさで作られています。
3種の一覧は皇太子殿下御成婚記念貨幣でも紹介しています。
出典
- [S1]財務省「記念貨幣一覧(2026.9.11現在)」 PDF 4頁(皇太子殿下御成婚)ほか https://www.mof.go.jp/policy/currency/coin/commemorative_coin/kinenkaitiran.pdf(2026-10-10 確認)
- [S2]宮内庁「天皇ご一家 ご略歴」 天皇陛下(お印)・皇后陛下(ご結婚関係)の欄 https://www.kunaicho.go.jp/learn/about/history/history01.html(2026-10-11 確認)
- [S3]宮内庁「ご結婚に関する用語」 結婚の儀 https://www.kunaicho.go.jp/word/from-category/word-kekkon.html(2026-10-11 確認)
- [S4]国立国会図書館 国会会議録検索システム「衆議院 大蔵委員会 第10号(平成5年4月21日)」 発言番号 2・6・11・73・75 https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112604629X01019930421(2026-10-11 確認)
- [S5]国立国会図書館 国会会議録検索システム「参議院 大蔵委員会 第6号(平成5年4月27日)」 発言番号 212・220・224・235 https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112614629X00619930427(2026-10-11 確認)
- [S6]国立国会図書館 国会会議録検索システム「衆議院 大蔵委員会 第1号(平成5年1月26日)」 発言番号 81 https://kokkai.ndl.go.jp/txt/112604629X00119930126(2026-10-11 確認)
- [S7]宮内庁「平成五年歌会始御製御歌及び詠進歌」 PDF 1頁 https://www.kunaicho.go.jp/culture/utakai/pdf/utakai-h05.pdf(2026-10-11 確認)
- [S9]e-Gov 法令検索「皇太子徳仁親王の婚姻を記念するための五万円の貨幣の発行に関する法律(平成5年法律第33号)」 第1条・第2条・附則 https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000033(2026-10-11 確認)
- [S10]e-Gov 法令検索「皇太子徳仁親王の婚姻を記念するための五万円の貨幣の形式等に関する政令(平成5年政令第163号)」 第1条・第2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/405CO0000000163(2026-10-11 確認)
- [S12]財務省(よくあるご質問)「過去に発行された記念貨幣は、現在でもお金として使えますか」 答 https://www.mof.go.jp/faq/currency/07ai.htm(2026-10-11 確認)
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